自分勝手な映画批評
彼が二度愛したS 彼が二度愛したS
2008 アメリカ 108分
監督/マーセル・ランゲネッガー
出演/ヒュー・ジャックマン ユアン・マクレガー ミシェル・ウィリアムズ
会計士のジョナサン(ユアン・マクレガー)は弁護士事務所の一室で一人、監査の仕事をしていた。そこへ、その事務所で働くワイアット(ヒュー・ジャックマン)が入ってくる。ほぼ初対面の彼らだが、気が合い、意気投合する。

泳がされ、溺れ、踊らされる男

生真面目な男が、ある男と知り合い、自分とは違う世界に引き込まれて行く物語。

人の心を掴むのが上手い人が世の中にはいる。残念ながら私は、そういうタイプではなく、逆の立場、掴んでもらう方の立場の人間だ。そういう立場の人間から言わせてもらえば、人の心を掴むのが上手い人との会話は、普段、能動的な会話作りに四苦八苦するのが嘘のように、自分では会話が弾んでいるように感じる。会話作りに長けている人は、話し上手であるのと同じように聞き上手でもあるのだろう。私自身、いつも以上に自分の事を話せて気分良くなったりするものである。ただ、自分の身の上を話すと言う事は、結局は気の利いた話題を提供出来ない事の裏返しなのかも知れない。

それなりに説明はあるのだが、しっかりとした描写はないので、ハッキリとは分からないのだが、こう言っちゃなんだが、ユアン・マクレガー演じる会計士のジョナサンは、面白味のない男なのだろう。そこに人の心を掴むのが上手いヒュー・ジャックマン演じるワイアットが現れ、彼の心を瞬時に解きほぐす。さらには、ジョナサンにとっては異次元とも言うべき官能の世界まで用意している。歯止めのなくなったジョナサンは本能は赴くままに溺れ、いつの間にか遥か彼方まで来てしまった。

本作は完全無欠のミステリーとは言い難く、ある程度の隙を見せる。但し、ミステリーとしてチープだと言いたいのではなく、そこにだけ特化しなかったという意味であり、しっかりとした伏線の張り方は実に巧妙だ。そして、用意されたその隙は、心理的なサスペンスの領分として生きてくる。

スタイリッシュな雰囲気も本作の特徴であろう。モダンで美しい映像が本作の世界を一層高める。そんな色彩に呼応するように、まるでドラキュラ伯爵のように見えるヒュー・ジャックマンは流石であり、また、ステレオタイプな色気ではないようにも思えるが、可愛らしくも落ち着いたムードで色気を感じさせるミシェル・ウィリアムズもヒロインとして魅力的だ。


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