自分勝手な映画批評
家族ゲーム 家族ゲーム
1983 日本 106分
監督/森田芳光
出演/松田優作 宮川一朗太 伊丹十三 由紀さおり
中学3年生の茂之(宮川一朗太)は腹が痛く寝て治すと仮病を使い、学校を休もうとする。「盲腸だったらどうするの?」と心配する母(由紀さおり)に茂之は「(痛いのは)すい臓のほうみたい」と適当な事を言ってごまかす。明日から家庭教師が来る事になっている。

変な家族にやって来た、変な家庭教師

原作は本間洋平の小説。風変わりな家庭教師を招いた、風変わりな家族を描いた作品。

本作の特徴的な描写として、対面ではなく、一列に横に並んで座る食卓が挙げられる。カメラの死角を作らない為に、不自然に囲まれる食卓を描いた作品は多々あるが、ここまで不自然な描写は、まず見ない。どうして、このような配列の食卓にしたのか意図は不明なのだが、もしかしたら単に見た目のインパクトを求めただけなのかも知れない。しかし、この描写は実に絶妙で、不自然な食卓は不自然な家族を象徴しているように感じる。

ならば、絶対に有り得ない家族が描かれているのかと言えば、私はそうは思わない。本作で描かれている家族は、一般的にはオブラートで包まれている姿を露にしただけであり、馬鹿げたコメディーではなく、現代の家庭をシニカルに風刺した作品だと言えるだろう。時代を感じさせる場面が無きにしも非ずだが、それでも本作の真意は現代でも十分に感じ取れるのではないかと思う。

主演の松田優作は本作公開時には30歳を過ぎている。ただでさえ貫禄がある彼なので、いくら留年し続けている大学生といっても、年齢的にもミスマッチだと言えるだろう。ただし、彼がもたらす演技も含めた違和感は重要であり、彼の存在感は本作には不可欠なのは言うまでもない。

しかし、共演陣も負けておらず、優作の怪演に勝るとも劣らない演技を魅せてくれる。特に、優作が家庭教師を担当する不出来な次男役の宮川一朗太は、物語の設定の関係もあるのだが、どちらが主役か分からない、優作と肩を並べる程の名演を魅せてくれる。優作の変化球のさらに上を行くような父親役の伊丹十三の魔球っぷり、比較的オーソドックスな役柄と言えるだろうが、それでも光る個性を魅せる母親役の由紀さおり等々、素晴らしいキャストが本作を豊潤にしている。

テレビドラマ版の「家族ゲーム」も実に面白い。長渕剛、松田洋治、白川由美といった面々が、本作とは違った雰囲気ではあるが、魅力的な世界を創造している。


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