自分勝手な映画批評
ガンジー ガンジー
1982 イギリス/インド 188分
監督/リチャード・アッテンボロー
出演/ベン・キングズレー
1893年の南アフリカ。列車の一等車に乗っていたインド人弁護士のガンジー(ベン・キングズレー)は人種差別政策により列車から放り出されてしまう…

偉人伝の映像化

インド独立の立役者マハトマ・ガンジーの半生を描いた作品。非暴力・不服従でインドの独立を実現させた指導者といった歴史教科書でならった程度の知識しかなかった無知な私にとってはガンジーの人となりと独立のプロセスと問題を勉強できた願ってもない作品だった。

実在の人物を描く場合、世間の評判とは違うアプローチでその人物の裏側を描き、人間性に迫る作品もあるが、本作はストレートにガンジーを描いているのだと思う。作品の進行も順序立てており、エピソードに不自然な片寄りや省略も感じられず、3時間を超える長丁場だが退屈することなく一気に見られた。

ハゲ頭で丸メガネの印象しかなかったガンジーだったので、若き日の彼の姿には驚きを感じたが、何故あのような容姿になっていったのが良く理解できた。これも作品の完成度の高さであろう。と同時にベン・キングズレーの役者魂に感服する。

本作は第55回アカデミー賞の作品賞・監督賞・主演男優賞・脚本賞等を受賞している。同年には大ヒットした名作「E.T」が公開されている。E.Tより本作のほうがアカデミー好みではあると思うが、名作を押さえての受賞は興味深い。

本作を見て改めて感じるのはイデオロギー・価値観の違いの問題だ。本作で描かれているのは人種・宗教の問題。単なる歴史映画ではなく現代への警告ともとれる。それほど今も変わっていない。本作で描かれているガンジーは名声の為でなく理不尽な世界と戦っている。理不尽を押し付けるのは強者のエゴ。そのエゴは単なる支配欲だけでなく、一方的な見解のイデオロギー・価値観だからタチが悪い。「君らがガンジーを英雄にしたのだ」というセリフが示すように、もしも違う世界であればガンジーは一介の弁護士だったであろう。


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