自分勝手な映画批評
パリより愛をこめて パリより愛をこめて
2010 フランス 95分
監督/ピエール・モレル
出演/ジョン・トラボルタ ジョナサン・リース=マイヤーズ
パリのアメリカ大使館の一室で、大使の補佐官としての通常業務を行なう傍ら、大使(リチャード・ダーデン)のチェスの相手をしているリース(ジョナサン・リース=マイヤーズ)。その最中に、彼の携帯電話に不審車両があるとの連絡が入った。

じゃ、帰ってナンバー・プレートでも替えてろ

パリを舞台に、対称的な二人のCIAエージェントがコンビを組んで繰り成すアクション作品。

作品タイトルは007の「ロシアより愛をこめて」が念頭にあったのは明白であろう。但し、内容自体はコピーしている訳ではなく別物。作品タイトルは単なる遊び心の表れなのかも知れない。だが、あえてもじって付けた事を深読みすれば、リュック・ベッソン率いる製作陣が偉大なる名作をリスペクトしつつ、彼らなりに咀嚼し消化させて作り上げた作品だとも受け取れるのではないかと思う。

パリのアメリカ大使館で大使の補佐官として働いているリースは実はCIAの見習いエージェント。まだ大役を任されていないリースは些細な仕事に飽き飽きし、もっと重要な任務に就きたいと常日頃思っていた。そんな時、フランスに来たCIAエージェントのワックスと行動を共にするようにとの指令が入る。喜ぶリースだったが、ワックスのあまりにも大胆でハチャメチャな仕事振りを目の当たりにし驚愕してしまう。

ノンストップアクションと呼ぶに相応しい騒々しさで展開して行く。中盤深くまでは息も吐かせぬ程の慌ただしさである。それを引っ張って行くのはジョン・トラボルタ演じるワックス。ワックスの猪突猛進、獰猛なキャラクターはスキンヘッドのトラボルタに実に良くマッチしていると言えるだろう。彼のロマンティックな眼差しは、逆に底知れぬ無気味な凄みを与える効果があるように思う。

本作には、かなり強烈なバイオレンスが描かれている。しかし、スピーディーな展開が感情をそこに留まらせず、余韻に浸る事を許さない。それは濃厚すぎるバイオレンスを中和させる役割を果たしているようにも思えるのだが、悲惨で壮絶な状況に殺伐としたリアリティーをもたらし、二次的に恐怖を煽っていると言えるだろう。

本作の実質的な主人公は、ワックスとコンビを組み、彼に振り回されるジョナサン・リース=マイヤーズ演じるリースであると言えるだろう。凄惨な任務に馴染まないリースは、ある意味、観る者と同じ目線だと言えるのかも知れない。悲しきヒロインを演じるカシア・スムトゥニアクも良い。

リュック・ベッソンという人は、心に染み入る余情ある作品を作り出す一方、本作のような明快なアクション作品も提供するユニークなクリエイターだと思う。もしかしたら、本作のような作品は一般的には蔑んで捉えられがちなのかも知れないが、エンターテインメントのひとつの源流がここにはあるように感じるし、あえて、このフィールドで勝負するリュック・ベッソンの心意気を讃えたい。


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