自分勝手な映画批評
ハンナとその姉妹 ハンナとその姉妹
1986 アメリカ 103分
監督/ウディ・アレン
出演/ミア・ファロー ダイアン・ウィースト ウディ・アレン マイケル・ケイン
感謝祭を祝うホームパーティーの席、エリオット(マイケル・ケイン)は妻の妹であるリー(バーバラ・ハーシー)への想いを募らせていた。

コミカルに描かれる奇妙な群像劇

三姉妹にまつわる人間関係をコミカルに描いた作品。アンタッチャブルと言えるようなかなりデリケート問題も扱っているのだが、それらをシニカルでブラックな笑いに変えてしまうセンスは抜群である。オムニバスのような形式をとっているが、長回しの手法とオムニバスの形式は相性が良いように思える。

本作には人間の本性が赤裸々にアピールされている。もし真正面から描いたのならば、サイコな悲劇になっていたのかもしれない。ともすれば、バイオレンスやホラーになっていたのかもしれない。

当たり前だが、人間誰しも欲も不安も持っている。しかし、それらをある程度抑圧し隠して生活している。そうしなければ社会は成り立たない。それが秩序だ。抑圧し隠された人間の本性とは多分に恐ろしいと言われがちかもしれないが、視点を変えて見れば滑稽に映ることもあるのだと思う。

欲や不安に悩む姿を滑稽だと笑うことは不謹慎で悪趣味なのかもしれない。しかし本作はそれでは終わらない。それはデフィルメされてるとはいえ、自らも共感し得る欲や不安に他ならないからなのだと思う。作品を通じて過敏で過剰に描かれた自分自身を笑い、さらには笑い飛ばす。この自虐的なユーモアは、かなり高度なユーモアだと言えるのではないかと思う。

そのユーモアが実現できているのは、登場人物のキャラクターがしっかりと確立されて描かれているからであろう。それは良い脚本と良い演技力の証である。クラシカルな劇中曲も素晴らしい効果をもたらしている。


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