自分勝手な映画批評
インファナル・アフェア インファナル・アフェア
2002 香港 102分
監督/アンドリュー・ラウ アラン・マック
出演/トニー・レオン アンディ・ラウ アンソニー・ウォン エリック・ツァン
マフィアのサム(エリック・ツァン)はラウ(エディソン・チャン)ら自分の手下の若者たちを激励し、彼らを警察学校へと送り出した。

乾杯しよう、警察官としての未来に

警察官だが身分を隠してマフィアに潜入している男と、逆にマフィアだが素性を偽り警察に潜入している男のそれぞれの生きざまを描いた作品。

本作は2006年にアメリカでマーティン・スコセッシ監督、レオナルド・ディカプリオ、マット・デイモン主演で「ディパーテッド」とタイトルを変えてリメイクされているのだが、リメイクしたくなる気持ちも容易く理解出来る程に魅力に満ち溢れ、尚且つ、非の打ちどころがないと言って良い程に高い完成度を誇る傑作であると思う。ちなみに「ディパーテッド」は第79回アカデミー賞で作品賞を受賞している。





警察官を目指し、警察学校で学ぶヤンとラウ。但し、ヤンは素質を見込まれて、表向きは規則違反の退学処分という名目で警察学校を途中で辞め、警察内部でもごく僅かの人しか知らない秘密裏で潜入捜査官となった。一方のラウは、実はマフィアのサムの手下であり、サムが警察に潜入させようとしているスパイであった。時は経ち、ヤンはサムのマフィア組織に所属、警察官になったラウは出世して情報課の課長になっていた。サムのマフィア組織がタイの密売人とコカインの取り引きが行なわれる予定になっているある夜、その情報をヤンから仕入れた、ヤンを潜入捜査官に仕立てた張本人であり、現在ではヤンが潜入捜査官である事を知る唯一の人物でヤンの上司である組織犯罪課のウォン警視は、ラウが率いる情報課の助けを借りて取り引き現場を押さえようとしていた。取り引きが行なわれる中、ヤンとラウは周りに気付かれないように、それぞれの本当のボスに情報を送るのだった。





敵となる組織への潜入、すなわちスパイ活動を描くだけでも面白いのに、それを双方で行なわせるアイデアがまずは素晴らしい。そして何より、それをカタチにする実行力が秀逸である。

こんがらがりそうになるくらいに複雑で溺れそうな設定を、取捨選択して出来る限り簡潔に抑え、スリルを上手く抽出してスピーディー且つコンパクトにまとめた手腕は見事。各所に細かなギミックがちりばめられているのもニヤリとさせられる。また、心理面の描写を重んじているところも良い。それによって手に汗握る攻防だけを見せるのではなく、もっと深いところに到達している作品となっている。

しかも、ここで終わらないのが本作の凄いところ。スタイリッシュな味付けが、更に本作の価値を高める事となる。

スタイリッシュに作品を彩る事は必ずしも簡単な事ではないだろう。そういった目論見があったとしても失敗すれば目も当てられない状況に陥ってしまう。しかし本作は、いとも容易くと思える程にスタイリッシュに演出し、作品のムードを高め、物語の展開をアシストしている。

例えば、雨にさらされる筈のない立体駐車場の床が水浸しであったり、絶対に見つかってはいけない密会の場が見晴しの良い屋上である事は、本来なら現実的ではない過度な演出である。しかし、本作では何ら不自然に感じる事なく、却ってそれらのシーンを盛り上げている。随所で感じられる、こういったセンスは抜群であり、本作の大きな特色になっている。

このスタイリッシュなセンスを最も、且つ分かりやすく体現しているのは主役の二人、マフィアに潜入している警察官ヤンを演じるトニー・レオンと、警察に潜入しているマフィアのラウを演じるアンディ・ラウである。

ハンサムな二人をスタイリッシュに感じるのは当然なのだが、同じ東洋人でも日本人にはない彼らのクールな身なりと所作はスタイリッシュな印象を更に強める。しかも、ただの見た目だけの俳優ではなく、演じる役柄の内面もしっかりと感じさせるところが素晴らしい。

また、アンソニー・ウォンやエリック・ツァンをはじめとする脇役陣の活躍も見どころとなる。インファナル・アフェアは本作で終いではなく三部作である。三部作である事は、脇役のキャラクターの濃さ、演じる俳優の素晴らしさも影響しているのではないかと思う。つまり、彼らをこのまま埋もれさすのは惜しい、もっとフィーチャーしたいという制作者の想いが影響しているのではないかと強く感じるのである。

その想いは次作「インファナル・アフェア 無間序曲」で実現される事となる。


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