自分勝手な映画批評
アフリカの女王 アフリカの女王
1951 イギリス 105分
監督/ジョン・ヒューストン
出演/ハンフリー・ボガート キャサリン・ヘプバーン
1914年9月。ドイツ領東アフリカの第一メソジスト教会では、セイヤー牧師(ロバート・モーリー)の指揮、セイヤーの妹ローズ(キャサリン・ヘプバーン)伴奏の元、原住民たちが合唱をしていた。そこにアフリカの女王という名の船に乗ったオルナット(ハンフリー・ボガート)が現れた。

魚雷を作れます?

原作はセシル・スコット・フォレスターの小説。第一次世界大戦下のアフリカ大陸で「アフリカの女王」と称する船を用いて奮闘する男女の姿を描いた作品。

ハンフリー・ボガートの代表作といえばカサブランカ。本作とカサブランカとでは、戦争下を舞台とし、戦争下でありながら直接的には戦争に関わっていない男が主人公だという設定の骨格が共通している。しかしながら面白い事に両作では、その様相は大きく異なる。

国際情勢の情報さえも届かないアフリカの奥地、ドイツ領東アフリカの村に1914年9月のある日、第一次世界大戦が勃発した影響でドイツ軍が押し入り、村を焼き払ってしまった。その地で宣教活動をしていたセイヤー牧師は、そのショックで亡くなってしまう。セイヤーの妹で一緒に暮らしていたローズは、村に出入りしていたオルナットの手引きでオルナットの船、アフリカの女王で村から脱出する。身を潜めるつもりでいたオルナットだが、ローズの怒りは収まらない。ローズは、オルナットの説明から川を下ったところの湖に、戦況に影響力があるドイツの100トン級の警備艦ルイゼがいる事を知り、アフリカの女王を魚雷に仕立ててルイゼを爆破しようとオルナットに提案する。

端的にあらすじを見れば、怨念じみた復讐劇なのだが、その実は、そこまでに至る道中を主体に描いた冒険物語である。激流があり、ワニがいて、さらにはドイツ軍の監視所の眼下を通過しなければならない困難極まるアフリカ大陸の川下り。オンボロの小型船で、どうやって迫り来る危機を乗り越えて目的地に辿り着くのか? 繰り広げられる冒険の物語は、さながら少年少女を主人公にした方が良さそうなありさまである。しかし、主人公は大の大人。それこそが本作の肝であり、だからこそ壮大なロマンスへと昇華されるである。

幾多の困難を乗り越える事により絆が育まれる二人。面白いのは、この二人の関係性だ。勝ち気で勇敢な女と、そんな彼女の威勢に折れるが、それでも結局は頼りになる男。それはどこか宮崎駿作品で描かれている男女の関係に似ているように感じる。そういった事を踏まえてみると、かなり強引な見解なのだが、宮崎駿のルーツが垣間見れる気がしない訳ではない。

本作のハンフリー・ボガートは、多くの人が共有するであろう粋でダンディズムな姿からは程遠く、ヒゲを貯えた風貌で大いに笑い、すこぶるひょうきんである。そんなボガートの表現力は本作の大きな見どころ。本作の演技でボガートは生涯唯一のアカデミー賞(第24回主演男優賞)を受賞している。対するキャサリン・ヘプバーンも気高く凛とした女性を好演。彼女の美しさがあってこその本作であるだろう。


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