自分勝手な映画批評
オリエント急行殺人事件 オリエント急行殺人事件
1974 イギリス 128分
監督/シドニー・ルメット
出演/アルバート・フィニー マーティン・バルサム ローレン・バコール
1930年ニューヨーク州ロングアイランドでアームストロング家の幼き娘、デイジーが誘拐され遺体で見つかる事件が起きた。それから5年後、探偵のポアロ(アルバート・フィニー)はロンドンに向かう為、イスタンブールよりオリエント急行に乗り込んだ。

列車内の殺人事件に挑む名探偵

原作はアガサ・クリスティ。タイトルが示すとおり、イスタンブール発のオリエント急行列車内で起きた殺人事件に名探偵ポアロが挑むミステリー。

登場人物の多さはミステリーにはもってこいのシチュエーションだ。しかし、その反面、登場人物が多いが故に識別が難しくもなるのも事実であろう。犯人捜しが鑑賞の醍醐味であるミステリー作品では致命的。時を同じくして大挙されれば尚更である。知名度の高い有名キャストを揃えることで、その弱点を克服する手立てになると思うのだが、公開時より随分と時が経ってしまえば、知名度から得られる効果は一部の映画ファンにしかもたらされないように思える。

しかし本作はこの難題を個別に行われる取り調べのシーンを用いて解決している。作品冒頭は登場人物の認知作業に四苦八苦するのかもしれないが、取り調べのシーンがあるので、しかも人物背景まで掘り起こされるので何ら問題はないのだろう。また、この取り調べは片寄ったとりあげ方はしておらず、誰に対しても同じシチュエーション、ほぼ同じ時間で同等に行われる。このことは、最後までミステリーとして引き付ける大きな要素となっており、また、列車内という密室劇だからこその産物だと私は思う。

時代設定も大変有効であろう。原作執筆当時はリアルタイムだとしても、今となっては遠い昔。インターネットもパソコンも携帯電話もない時代。ましてや足止めされて外と遮断された列車内。名探偵との誉れが高いポアロの推理力と洞察力が試される。冒頭、おどけて見えたポアロだが、事件が発生すると一気に凛となる。ハイテクで情報を駆使した現代の謎解きも面白いが、簡素だからこそ研ぎすまされて露になるミステリーの本質は大変見応えがある。

本作と関係はないのだが、イギリスのテレビシリーズ、デヴィッド・スーシェ主演の「名探偵ポワロ」も面白い。


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